観た映画のあらすじや感想を好きに書いているサイトです。あくまで個人的な感想としてネタバレも若干含めて書いているので、その辺りはご容赦下さい。
<あらすじ>
アメリカ合衆国のワイオミング州にあるインディアン居留地”ウインド・リバー”。
その地でベテランハンターとして働くコリーは、雪山の中で少女の遺体を発見した。
彼女はネイティブ・アメリカンであり、名前はナタリー。
地元警察のベンは、FBIに捜査を依頼するが、派遣されたのは新米の女性捜査官ジェーン1人であった。
雪深い土地での慣れない捜査に苦戦するジェーンは、コリーに協力を依頼し、コリーも快く引き受ける。
その後の検死の結果、ナタリーの身体には裂傷やレイプの痕があり、更に彼女が零下30度の極寒の中、10キロにも及ぶ距離を裸足で逃げたことが判明した。
常識的に考えればそんな事は不可能であり、謎は一層深まる。
そんな中、今度はナタリーの恋人であるマットも森の中で遺体で発見される。
<感想>
ワイオミング州ウインド・リバー居住区で実際に起こった事件をベースとして描かれた作品です。
観る前は、難解な事件を解決していくというオーソドックスなサスペンス映画なのかなと思ったんですが、実際に鑑賞してみると、アメリカにおけるネイティブ・アメリカンの複雑な立場を描いた社会派映画のような側面もあり、思ってたのとはちょっと違いました。
因みに、実話ベースというのは、この映画で描かれている事件そのものではなく、先住民族であるネイティブ・アメリカンの現実や、そこで暮らす女性に対する性被害の現状という意味らしいです。
しかし、白人によって住処を奪われたネイティブ・アメリカン達が、このような極寒の地に追いやられ、そこで起きた犯罪についてはまともな捜査すら行われないとは…。
我々日本人にはほとんど知られていない事実ですね。最後の字幕によると、この地で犯罪に巻き込まれ失踪する先住民の女性達については、その数すら国は把握できていないとの事でしたが、元々闇深いアメリカ社会の、もう一つの新しい闇を垣間見た気分です。
全編通して、重苦しい空気の中で話が展開していくんですが、その中において、一見頼りないように見える新米FBI捜査官ジェーンの存在が大きかったですね。
周りの荒んだ人間達の中で、唯一暖かい存在のように感じました。
主人公コリーの娘の話を聞いて涙したり、この状況下で一人本気で捜査に取り組もうとしたり、非常に人間らしくて良かったと思います。
終盤の、現在から過去のシーン(ナタリーの事件の真相)に移るところは、上手い編集でしたね。
それにしても、このように迫害され、特定の土地に閉じ込められた人々の心というのは、あんなにまで荒んでしまうのかと、何だかやり切れない気持ちになります。
勿論、犯罪自体は忌むべき事であり、肯定する気はさらさらありませんが、夢も希望もない世界に墜とされた人間がああなってしまうのは、致し方ないのかもしれません。
個々の犯罪としては加害者ですが、長い歴史の中で見れば彼らは被害者なのではないでしょうか。
なお、全編通して雪原が舞台となるため、物語の重苦しさとは対照的に、背景の美しさがとても印象的でした。
映画としては派手な演出は少なく淡々としていますが、社会派モノの側面をもったサスペンス映画としては、秀逸な作品だと思います。
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